寒さの厳しいある日、ニューヨーク、マンハッタンの世界貿易センター跡地を訪れました。

ニューヨークの街を一望できるという、110階建て高層ビルの屋上にいつか行こう・・・それが私の長い間のささやかな夢でした。

今、ここには何もありません。

全てが無に帰する爆心地「グラウンド・ゼロ」がこの地の呼び名になりました。

地下鉄の階段を上り、地上に出た瞬間、私は胸が詰まりました。
セント・ポールズ礼拝堂を取り囲んでいたのはあふれんばかりの花々と故人へのメッセージ、それは怒りよりも強く深い祈りに感じられたのです。
「祈 り」
すぐ前にある横断歩道の先には、延々と続くフェンスの壁が見えました。
穏やかな風が流れ、あまりにも静かで、ここが「あの場所」であることをすぐに理解することができませんでした。
NEVER FORGETと書かれたツリーに気づくまでは。
「平 静」
「追 憶」
ここにはまだ見つからないたくさんの人々がいます。

フェンスの中央には、その時の写真と亡くなられた方々の名前を記したボードがかかっていました。
家族、友人、恋人・・・

それでもニューヨークは
悲しみを乗り越え、明るさを取り戻しつつ
あります。
God Bless America
(アメリカに神のご加護を)
しかし、この言葉はこの国だけに限りません。

世界中の人々が願うことはただひとつ。

「Peace」(平 和)
最近、反戦デモがニューヨークを含む世界600都市で行われたといいます。
新聞記者のインタビューに答えて、ある女子大生が言いました、


「何の罪もない人が攻撃されるのは、あってはならないことです」と。

January,2003